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2009年4月14日 (火)

『資本論』第2部第8稿の第21章該当部分の段落ごとの解説(その77)

§§第8稿第3章の段落ごとの解読(続き)§§

 

 (以下は前回の【115】パラグラフの考察の続きである。)

 

 以上によって、蓄積に先行する貨幣蓄蔵のためのすべての要素が解明されたことになる。この考察を踏まえて、われわれは次に、マルクスの草稿に戻ってその解読を試みることにしよう。この場合も、われわれは各部分ごとに、箇条書きにして分けて論じることにする。

 1) I とIIとの関係のなかでの一時的な--拡大再生産に先行する--貨幣蓄蔵のための要素は,次のような場合に生じる。 I にとっては,m I の一部分がIIの追加不変資本のためにIIに一方的に売られる場合にのみ,生じる。〉
 ここでマルクスは、貨幣蓄蔵が可能なのは、I にとっては,m I の一部分がIIの追加不変資本のためにIIに一方的に売られる場合にのみ,生じる〉としている。確かにこれはこの限りではこのとおりなのであるが、マルクスは、どうして I がm I をただ一方的に販売するだけであるのか、どうしてそれが可能なのかについて、またそうして蓄蔵される貨幣がどういう蓄積のための貨幣蓄蔵なのかについても何も述べていない。しかしわれわれはすでに考察したものを前提に考えるなら、 I がm I をただ一方的に販売することが可能なのは、それは部門 I のA群の資本家だからであり、だから部門 I にはB群の資本家が存在することが前提されていることを知っている。またそうして蓄蔵される貨幣は I における追加可変資本のための貨幣蓄蔵であること、だから資本家B( I )たちは、それまで蓄蔵してきた蓄蔵貨幣を追加可変資本として前貸し、追加労働力に転換しようとしていることを知っているのである。
 さらにマルクスは〈m I の一部分がIIの追加不変資本のためにIIに一方的に売られる場合〉について述べている。だからこのケースはわれわれが先に考察した(1)と(2)のケースに該当するであろう。そしてこのm I を一方的に購入するのは、部門IIの資本家のうちこれから現実に蓄積を行なおうとこれまで蓄蔵してきた貨幣を追加不変資本に前貸しようとしているB群の資本家たちであることも分かるのである。

 2)IIにとっては,同じことが I の側で追加可変資本について行なわれる場合に生じる。〉
 IIにおいては、 I のB群の資本家達がそれまで蓄蔵してきた潜勢的貨幣資本を現実に追加可変資本として投下し、そのB( I )に雇用された追加労働者がIIのA群の資本家たちから、彼らの剰余価値のうち将来の蓄積に予定されている部分を購入することによって生じるわけである(ただし上記のケースと同じケースを想定している場合であるが)。資本家A(II)はその貨幣を蓄蔵する。こうしてIIにおいても貨幣蓄蔵が生じることになる。もちろん、IIはすでに見たように、それまで蓄蔵してきた貨幣を現実に追加不変資本に前貸しようとしている資本家B群も存在することは、先に--1)で--見たとおりである。

 3)同じくIIにとっては, I によって収入として支出される剰余価値の一部分がc(II)によって補填されず,したがってm(II)《部分》にまで及び,この部分がそれによってただちに貨幣化される場合に生じる。もし(v+m/x) I がcIIよりも大きければ,cIIはその単純再生産のためには,m(II)のうちから I が消費してしまったものを I からの商品によって補填する必要はない。〉
 これは上記で考察した(2)のケース〔I(v+m/x)>IIc〕を想定している。すなわち I の単純再生産部分の転換のためにはIIcが不足し、その分だけIImから追加不変資本として蓄積が必要となる場合である。つまりその蓄積が必要な分だけ、IIにおいて、剰余価値部分が貨幣化され、それが蓄蔵されるというわけである。もちろん、IIでは I の蓄積に対応した蓄積がそれ以外にも生じるのであって、その部分については、その前に考察したケースと基本的には同じであるために、マルクスは考察を省略しているのである。
 そして I の単純再生産の補填のためにも、IIで必要な蓄積のための貨幣蓄蔵が如何になされるかについては、すでにわれわれが(2)で考察したとおりである。
 さて、マルクスは、この(2)のケースでは、cIIはその単純再生産のためには,m(II)のうちから I が消費してしまったものを I からの商品によって補填する必要はない〉と述べている。これはどういうことであろうか。まずIIcのすべてと、 I(v+m/x)の一部分(われわれの(2)の考察では I〔v+m/x-my〕)は、単に単純再生産の補填関係でしかない。マルクスが〈m(II)のうちから I が消費してしまったもの〉というのは、だからわれわれの先の考察ではmyに該当するわけである。それを部門IIでは、A群の資本家が将来の蓄積のために剰余価値m(II)の一部(my)を I に販売して、それを将来の蓄積のために蓄蔵すると仮定されているわけである。だからマルクスはそれを〈 I からの商品によって補填する必要はない〉としているのである(なぜなら彼らは一方的に販売する資本家達だから)。しかしそうしたことが可能なのは、他方で、B(II)の資本家達が、それまで蓄蔵してきた潜勢的可変資本(my)を現実に投下して、  I(v+m/x)の一部(my)を一方的に購入するからであって、それをマルクスは指摘するのを忘れているのである。

 4)間題になるのは,IIの資本家たちの交換--m(II)に関連しうるだけの交換--の内部でどの程度まで貨幣蓄蔵が行なわれうるか,ということである。すでに述べたように,IIの内部で直接的蓄積が行なわれるのは,m(II)の一部分が直接に可変資本に転化される( I でm I の一部分が直接に不変資本に転化されるのとまったく同様に)ということによってである。IIのさまざまな事業部門のなかでも,また同一の事業部門のさまざまの構成員(消費する構成員)についても,蓄積の年齢階層はさまざまであるが,必要な変更を加えれば, I の場合とまったく同様に説明される。一方のものはまだ退蔵の段階にあって,買うことなしに売り,他方のものは拡大再生産の時点(沸騰点)に達している(売ることなしに買う)。追加可変《貨幣》資本はまず第1に追加労働力に支払われる。しかしこの労働力は,貨幣蓄蔵をしつつある人々(労働者の消費にはいる追加消費手段の所有者)から生活手段を買う。彼らの貨幣蓄蔵の程度に応じて,貨幣は彼らの手から出発点に帰ってこないで,彼らが貨幣を退蔵するのである。〉
 ここでマルクスが考察しているのは、先に I の追加不変資本の蓄積の場合の貨幣蓄蔵と類似したケースとして取り上げた、IIにおける追加可変資本の蓄積の場合の貨幣蓄蔵のケースである。すなわち〈IIの資本家たちの交換……の内部〉〈m(II)に関連しうるだけの交換〉である。IIの内部で直接的蓄積が行なわれるのは,m(II)の一部分が直接に(追加)可変資本に転化されるということによってである。これは〈 I でm I の一部分が直接に(追加)不変資本に転化されるのとまったく同様〉である。違いは I の場合は資本家同士の交換であったのに対して、今回は資本家同士の補填関係の間に追加労働者が媒介者として入ってくる点である。IIのさまざまな事業部門のなかでも,また同一の事業部門のさまざまの構成員(消費する構成員)についても,蓄積の年齢階層はさまざまであるが,必要な変更を加えれば, I の場合とまったく同様に説明される〉。つまり〈一方のものはまだ退蔵の段階にあって,買うことなしに売り(すなわちA群の資本家に属し),他方のものは拡大再生産の時点(沸騰点)に達している(売ることなしに買う(すなわちB群の資本家に属する)(資本家B(II))の追加可変《貨幣》資本はまず第1に(IIで新たに雇用された)追加労働力に支払われる。しかしこの労働力は,(資本家A(II)、すなわち)貨幣蓄蔵をしつつある人々(労働者の消費にはいる追加消費手段の所有者)から生活手段を買う(だからIImの一部は必要生活手段として生産されていなければならないわけだ)。彼らの(すなわちA(II)の)貨幣蓄蔵の程度に応じて,貨幣は彼ら(A(II))の手から出発点(B(II))に帰ってこないで,彼ら(A(II)が貨幣を退蔵するのである。〉

 以上が、この最後のパラグラフの内容である。これで草稿は終わっている。われわれは全体的な総括は別途やることにして、ひとまずパラグラフごとの解読はこれで終えることにしよう。ただ、この最後のパラグラフに関連して、少し補足しておくべき問題がある。それを最後にやっておくことにする。

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