無料ブログはココログ

« 『資本論』第2部第8稿の第21章該当部分の段落ごとの解説(その70) | トップページ | 『資本論』第2部第8稿の第21章該当部分の段落ごとの解説(その72) »

2009年3月19日 (木)

『資本論』第2部第8稿の第21章該当部分の段落ごとの解説(その71)

§§第8稿第3章の段落ごとの解読(続き)§§

 

 (以下は、【114】パラグラフの考察の続きです。)

 上記の固定資本を考慮した社会の総資本の再検討を踏まえて、もう一度、単純再生産の場合の固定資本の補填について考えてみよう。
 われわれは単純再生産の表式における部門 I の不変資本4000のうちその十分の一の400が固定不変資本の価値の移転分であり、それが如何に貨幣流通に媒介されて補填されるのかを考察したのであった。そして400が一年間に価値移転するということは、部門 I の固定資本総額は4000であり、それが年々その十分一ずつ磨滅し、生産物に価値を移転することがわかったのである。だから部門 I では、そうした年々磨滅する400を他方で蓄蔵貨幣として堆積していく必要があったわけである。しかし貨幣蓄蔵を行なうためには、ただ販売してその売り上げ金を流通から引き上げて退蔵する必要がある。だからそれが可能であるためには、社会的にはそれに対応した一方的販売者が必要なのであるが、それがちょうど、それまで固定資本の更新のために償却費を積み立ててきた資本家たちがその更新のために流通に投じる貨幣額がちょうど400になると仮定されたのであった。つまり部門 I の4000の固定資本総額のうちその十分一が毎年毎年死期を迎え、新しい現物と取り替えられなければならないことをこのことは示しているのである。つまり部門 I の4000の固定資本は毎年毎年、その十分の一が死期を迎え、新しい現物に更新され、そして10年経つと、ちょうど一回転して、すべての固定資本の現物がリニューアルされることになるわけである。だからここには次のような等式が年間生産物を媒介して成り立っていることがわかる。

 《固定不変資本の磨滅分(=価値移転分)》=《固定資本の死滅分(現物更新分)》

 しかしこの等式が成り立つ必然性は何もないことにわれわれは気付く。なぜなら、4000の固定資本総額が毎年毎年その十分の一の400ずつが磨滅し、それだけを生産物に価値移転させるからといって、その固定資本総額の十分一が毎年毎年死滅し、現物補填される必要性は何もないからである。4000の固定資本総額が10年後に一遍に死滅すると考えてもその限りでは何も不都合はないからである。ただそれでは固定資本の補填の必要な貨幣蓄蔵の説明が不可能になるから、われわれは固定資本の十分一が毎年死滅し、現物更新される必要があると仮定しているだけなのである。どうして、こうした考察が必要なのかは、後に分かるであろう。

 さて、以上の単純再生産の場合の考察を参考に、ではそれが拡大再生産の場合はどうなるのかを次に見ることにしよう。拡大再生産では何が新たな問題として出てくるのであろうか。われわれは拡大再生産として【62】パラグラフで提起されたB式を考えてみよう。

    B    拡大された規模での再生産のための出発表式

     I )  4000c+1000v+1000m=6000        
                                     合計=9000
    II )  1500c+ 750v+ 750m=3000

 単純再生産の場合と同じ仮定にたつと、次の式がえられる。

  I )【3600】3600Rc+400Dc+1000v+1000m=6000
                           合計【4950】+9000=13950
 II )【1350】1350Rc+150Dc+ 750v+ 750m=3000

 ここで I の蓄積率を50%とし、旧来の有機的構成にもとづいて蓄積されると仮定すると、ここに一つの困難が生じる。つまりこれまでは不変資本4000cと可変資本1000vの割合4:1で、蓄積分の剰余価値(500m)を分割し、一方を追加不変資本、他方を追加可変資本に転換するとすれば良かったが、ここでは有機的構成の不変資本部分には固定的な不変資本も加える必要がある。そうすると部門 I は7600:1000=38:5となり、計算が面倒になる。よってわれわれは蓄積分の分割は従来通り、部門 I では4:1、部門IIでは2:1で行うことと仮定しよう。問題なのは細かい数値ではなく、何が新たな課題として生じてくるのかを見極めることだからである。そこで、1000m I の半分、500m I のうち400が追加不変資本に、100が追加可変資本に転化されるとする。しかし400の追加不変資本のうち十分一40が固定成分として蓄積されることになる。だから次のようになる。

  I )【3600】3600Rc+360Rmc+400Dc+40Dmc+1000v+100mv(+500消費)

 II )【1350】1350Rc+90Rmc+150Dc+10Dmc+750v+50mv(+600消費)

 さて、問題はこのような補填は貨幣流通を媒介してどのようになされるのかということである。 I(3600Rc+400Dc)とII(1350Rc+150Dc)については、すでに単純再生産で考察ずみである。もちろん、 I (400Dc)とII(150Dc)の固定資本部分の補填については、われわれが単純再生産における固定資本の補填で考察した場合に想定した諸条件が前提されると仮定することとする。だからここで問題なのは、 I 、II両部門の蓄積部分、すなわち I(360Rmc+40Dmc)とII(90Rmc+10Dc)の補填である。しかしこれ自体にはそれほどの困難はない。というのは、これについては、すでにわれわれは I にも、IIにも将来の蓄積のために貨幣蓄蔵の途中にある資本家群Aとすでに蓄蔵された貨幣が必要な額に達したので現実に蓄積を行おうとしている資本家群Bとを想定することによって解決できたからである(もちろん、こうした蓄蔵貨幣〔蓄積基金〕の契機を入れた拡大再生産の表式の展開はこれまで行なわれなかったが、それは後に検討する機会もあるであろう)。追加的な不変資本部分に、流動不変資本と固定不変資本の区別があったとしても、それらはいずれも新しく投下されるものであり、問題はそうした現物が市場に見いだされる条件が存在することである。しかしそれは部門 I の剰余価値の一部がそうしたものとして、すなわち固定的な不変資本として(例えば機械や道具のような労働手段の形態で)生産されている必要があるが、しかしそうしたことはそのように前提すれば、それで済むわけである。だからこうした転換そのものは、追加不変資本が流動資本と固定資本とに分割されても何も変わらないことが分かる。そしてそうした転換が行われて、拡大された規模での再生産を開始する資本構成に転換されたならば、それは次のようになるわけである。

  I )【4040】3960Rc+1100v=【4040】+5060=9100  
                              【6050】+7300=13350
 II )【2010】1440Rc+800v=【2010】+2240=4250             

 つまり固定資本は磨滅分が補填されてもとの【4000】( I )と【2000】(II)とに戻り、さらに新たな蓄積分として【40】( I )と【10】(II)とが加わって、それぞれ【4040】( I )と【2010】(II)になっている。そして流動不変資本と可変資本も蓄積分を加えてそれぞれ増加しており、現実の拡大された規模での再生産は、結局、固定資本は50増加、流動不変資本と可変資本は合わせて600増加、社会の総資本としては、全体として650増加した規模になっていることが分かる。この拡大された規模での再生産が行われれば、その年の末には次のようになっているはずである。

I )【3636】3960Rc+404Dc+1100v+1100m=【3636】+6564
                             【5445】+9805=15250
II)【1809】1440Rc+201Dc+800v+800m=【1809】+3241

 すなわち固定資本の十分の一が流動化して商品資本に価値を移転し、剰余価値率100%として計算してある。
 さて、ここで部門 I の剰余価値1100mの半分550mが蓄積されるとし、440が追加不変資本に、110が追加可変資本に転換されるとする。そして440の追加不変資本の十分の一44が固定不変資本に、残り396が流動不変資本として蓄積されることにする。すると次の表式が得られる。

 I )【3636】3960Rc+396Rmc+404Dc+44Dmc+1100v+110mv(+550)
               
II )【1809】1440Rc+107.1Rmc+201Dc+11.9Dcm+800v+59.5mv(+621.5)

 この転換を貨幣流通の媒介を経て如何に行うかは、すでに先に検討した場合と同じであろう。すなわち I(3960Rc+404Dc)とII(1440Rc+201Dc)については、単純再生産における固定資本の補填で考察したケースであり、 I(396Rmc+44Dmc+110mv)とII(107.1Rmc+11.9Dcm+59.5mv)については、蓄積における補填と同じである。云々。

 と、このように問題はスムーズに進むかに見える。しかしここにはわれわれが見落としている問題が潜んでいるのである。

 (このパラグラフの考察は、さらに次回に続く。)

« 『資本論』第2部第8稿の第21章該当部分の段落ごとの解説(その70) | トップページ | 『資本論』第2部第8稿の第21章該当部分の段落ごとの解説(その72) »

『資本論』第2部第8稿第21章の解説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1480743/39177812

この記事へのトラックバック一覧です: 『資本論』第2部第8稿の第21章該当部分の段落ごとの解説(その71):

« 『資本論』第2部第8稿の第21章該当部分の段落ごとの解説(その70) | トップページ | 『資本論』第2部第8稿の第21章該当部分の段落ごとの解説(その72) »