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2009年3月10日 (火)

『資本論』第2部第8稿の第21章該当部分の段落ごとの解説(その70)

§§第8稿第3章の段落ごとの解読(続き)§§

 

【114】

 〈注意しておきたいのは,蓄積についてのこの叙述では,不変資本の価値は,それが商品資本の価値のうちの,それの助力によって生産された部分であるかぎりでは,正確には示されていないということである。新たに蓄積された不変資本の固定部分は,ただ徐々かつ周期的に,これらの固定的要素そのものの性質に応じてさまざまな仕方で,商品資本のなかにはいるだけである。それゆえ,原料,半製品,《等々》が商品生産に||71|はいる場合には,商品資本のかなり大きい部分が流動《不変》成分と可変資本とから成っている。(しかし,このような取扱い方ができるのは,流動成分の回転のためである。すなわち,流動部分がそれに交付された固定資本の価値部分といっしょに1年のうちに何回も回転して,供給される商品の総額が,年間の生産にはいる総資本の価値に等しくなる,ということが仮定されているのである。)しかし,機械経営に補助材料だけが用いられて原料が用いられない場合には,労働要素=vが商品資本のなかでより大きく(商品資本の成分として)現われなければならない。利潤率では--固定[74]成分が周期的に生産物に交付する価値の多少にかかわりなく--剰余価値が総資本にたいして計算されるのにたいして,周期的に生産されるそれぞれの商品資本の価値については,不変資本の固定部分は,ただ,その消費によって平均的に価値を生産物そのものに交付するかぎりで,算入されるべきものである。〉

 【ここでは、マルクスはこれまでの拡大再生産の表式を使った敍述では、不変資本の価値は、その固定成分については捨象されており、だから正確には示されていなかったのだという。マルクスは単純再生産においては、固定資本の補填が如何になされるのかについて、表式を使ってかなり詳しい考察を行なっている。しかし拡大再生産の場合には、表式を使った考察を行なう代わりに、こうした簡単な示唆で終えているのである。もちろん、マルクス自身にそれを許す時間的余裕が無かった故であろう。その意味では、拡大再生産において、固定資本の補填が如何に行なわれるかを表式を使って考察するという課題は、今後に残された課題の一つということができるかも知れない。われわれは、このパラグラフを理解するためにも、最初に、簡単にそれを試みてみることにしよう。しかしそのためには、単純再生産における固定資本の補填が如何になされたかを少し振り返り、その上で、さらに拡大再生産における、固定資本の補填が如何になされるのかについて、考察する必要がある。そうすれば、拡大再生産においては、単純再生産とは異なり、何が固有の問題として出てくるのかがわかるであろう。

 まずマルクスが使っている単純再生産の表式を再録しておこう。

 A) 単純再生産の表式

   I ) 4000c+1000v+1000m=6000        
                                  合計=9000
  II ) 2000c+ 500v+ 500m=3000

 いまここで、 I 、IIとも不変資本のうちその十分の一が固定成分であり、固定資本の償却期間(回転期間)は十年と仮定しよう。そうすると上記の式は次のようになる。ただRcは流動不変資本、Dcは固定不変資本のことである。

   I ) 3600Rc+400Dc+1000v+1000m=6000
  II ) 1800Rc+200Dc+ 500v+ 500m=3000

 いま I にもIIにも、固定資本が前年度末に磨滅してしまい、今年度に新規補填する資本家群(第一部)と将来の補填のためにいまだ貨幣を積み立てている段階にある資本家群(第二部)とが存在すると仮定しよう。すると固定資本の補填が貨幣流通の媒介によって如何に行われるかを考えてみよう。

 まず第 I 部門の不変資本については、前年度末で固定資本が磨滅してしまった資本家群(第一部)というのは、同時に前年度末でその積み立てていた償却費用のための蓄蔵貨幣が丁度400ポンドになった資本家でもある。彼らは今年度の初めに、その400ポンドを投じて固定資本の更新をする。彼らは同じ第 I 部門の他の資本家群(第二部)から固定資本の現物形態を購入する。彼らは一方的購買者として登場する。他方で、彼らに固定資本の現物を販売した資本家(第二部)たちは、その売り上げ金400ポンドを、今度は彼ら自身の固定資本の将来の償却のために蓄蔵するわけである。だから彼らは一方的販売者として登場するわけである。こうして部門 I の固定資本の補填は行われる(もちろん、この場合、第一部の資本家群に固定資本の現物形態を販売するのは、第二部の資本家群でなければならない必然性は何もない。両資本家群の一方的購買額と一方的販売額が一致する必要性はあるが、しかし一方が他方に販売しなければならないわけではないからである。流動不変資本をもっぱら生産する資本家たちもやはり固定資本の更新をしなければならず、そのための償却費を積み立てなければならない。だから彼らの場合は彼らの生産物である流動不変資本〔原材料等〕を一方的に販売して、その売り上げ金を蓄蔵する必要があるわけである。彼らから原材料を一方的に購買する資本家たちは、第一部に固定不変資本〔労働手段〕を一方的に販売する資本家達であろう。つまりこの場合は固定不変資本〔労働手段〕をもっぱら生産する資本家たちを媒介して、両資本家群の一方的購買と一方的販売が価値額として一致することになるわけである。ただわれわれは簡単化のために、第一部の資本家群に固定資本の現物形態を販売するのは、第二部の資本家群であると仮定しているだけなのである)。。
 次に第II部門の不変資本については、同じように前年度末までに固定資本が磨滅してしまった資本家群(第一部)は、それまで蓄蔵した200ポンドを投じて、I mから固定的生産手段(労働手段)を購入する。彼らは一方的購買者として登場する。だからこの場合1000m( I )のうち200m( I )は固定的な生産手段(労働手段)として生産されているわけである。彼らはそれをIIの資本家(第一部)に販売して200ポンドの貨幣を入手する。彼らはその貨幣でIIの第二部の資本家から彼らの生活手段を購入する。このIIの第二部の資本家たちは、将来の固定資本の償却のために200Dcの生活手段を販売して、その貨幣を積み立てる資本家たちである。彼らは一方的販売者である。彼らが積み立てる貨幣は、丁度、同じ部門IIの第一部の資本家たちが流通に投じた蓄蔵貨幣と同額であることが分かる。つまりこの場合も、貨幣はそれを投じた同じ資本家の手許にではないが、同じ部門の資本家の手許に還流し、やはり同じように蓄蔵貨幣の形態として納まったのである。

 このように単純再生産では、蓄積に必要な蓄蔵貨幣の積み立ての場合と同じように、固定資本の償却費を積み立てる資本家群(第二部)と固定資本が磨滅し、丁度積み立て終わった蓄蔵貨幣を貨幣資本として前貸して固定資本の更新を行う資本家群(第一部)とを想定することによって問題は解決したのであった。

 次にわれわれは社会の総資本の概念をもう一度再検討し直さなければならない。というのは、これまでは固定資本を捨象してきたので、社会の総資本は、総商品資本で代表させることができた。すなわち単純再生産の出発式で示されている9000がその社会の総資本を表していたのである。しかし固定資本を考慮するとなると、商品資本総額では社会の総資本を代表させることはできない。なぜなら、商品資本総額というのは、前年度一年間に生産された総商品資本を示すのだが、社会の総資本は商品資本としては現われない現存する固定資本をも含むからである。社会の固定資本総額は、先の単純再生産の表式から考えてみるに、第 I 部門は4000、第II部門は2000である。というのは先に固定資本の回転期間は10年としたのだから、一年間に固定資本の十分の一が磨滅し、商品生産物にその価値を移転したと考えなければならないが、それが部門 I では400Dcであり、部門IIでは200Dcだから、それを10倍すれば、それぞれの部門の固定資本総額がでてくることになるからである。では社会の総資本は商品資本総額9000に固定資本総額6000( I 部門=4000+II部門=2000)を加えた合計15000がそうかというとそれほど簡単ではない。なぜなら、部門 I の固定資本総額は4000であるが、それは年々その十分一、すなわち400を商品生産物にその価値を移転する。ということは前年度に生産された商品資本総額6000のなかに、その移転分が含まれていることになる。だから9000の商品資本総額と同時に存在している固定資本総額は価値を移転した残りの資本総額であり、それは6000の固定資本総額の十分の一600を移転した残り5400である。だから社会の総資本額は9000+5400=14400でなければならない。だからわれわれは固定資本総額をも含めた表式をもう一度書いてみよう(【 】で囲んだものが固定資本額である)。

I )【3600】 3600Rc+400Dc+1000v+1000m=6000
                          合計【5400】+9000=14400
II)【1800】 1800Rc+200Dc+ 500v+ 500m=3000   

 ところで単純再生産としては年々同じ再生産を繰り返すことになるが、次の年の再生産を開始する総資本の構成はつぎのようになる。

I )【4000】 3600Rc+1000v=【4000】+4600=8600
                         合計【6000】+6900=12900
II)【2000】 1800Rc+ 500v=【2000】+2300=4300      

 つまり固定資本は前年の生産過程で磨滅した部分はリニューアルされてもとの資本額に戻っている。そして流動不変資本(原材料等)と可変資本(これは資本家が貨幣形態で保持し後に労働者に支払うと仮定してもよいが、少なくとも労働力への転化は終わっている必要がある)が準備されているわけである。これがこれから一年間の生産を開始する段階の総資本の構成である。その総資本額は12900と出発表式に表されていた社会の総資本額より1500少ないが、これはその分だけ資本家の消費に回されたからである。つまり生産的に社会で働いている資本総額というのは固定資本も含めると12900なのである。
 そして上記の出発の資本構成が、一年後に得る表式は、結局、その一つ前とまったく同じ表式になるわけである(剰余価値率100%)。つまり部門 I では、4000の固定資本の十分の一が流動化して商品資本に価値移転される(商品資本の不変資本部分になる)一方で、固定資本の額としてはそれだけ減額する(磨滅する)わけである。

 (このパラグラフの考察は次回に続く。)

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